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    • 2016.07.17 Sunday
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    再会

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      鍵をあけて、真っ暗な部屋に入る。
      一人暮らしを始めて半年。
      玄関の灯りをつけなくても、小さなキッチンを通り抜けてベッドまでたどりつけるようになった。
      スーツの上着だけを脱いで、ベッドになだれこむと、枕元のの小さなスタンドをつけた。
      「おかえり」
      そう、つぶやくようになったのはいつからだったろう。

      就職をして、引っ越し費用がたまった頃、私は一人暮らしを始めた。
      小さなキッチンのついたワンルーム。
      もともと鍵っ子だったから、一人暮らしにはすぐに慣れた。
      暗い部屋に帰ってくることも、淋しかったのは最初の3日くらいだ。
      口うるさい母親がいないというのは清々する。
      私は起き上がると、結んでいた髪をほどいて、部屋を見回した。
      今はまだお給料も安いし、これくらいの部屋にしか住めないけれど、いつか、猫も一緒に暮らせるところに住むのが夢だ。
      実家は一戸建てだったけれど、母が綺麗好きで、父がアレルギーだった。
      猫はおろか、金魚すら飼わせてもらえなかった。
      すぐ水が濁ったり藻がついたりする水槽が許せないらしい。
      それと同じような理由で、毛が抜ける動物も駄目だった。
      動物を飼っている友達の家に行くと毛を払ってからじゃないと家に入れてもらえなかった。

      「あの子は今頃どうしているだろう」
      小学生の頃、駅前で会った子猫を未だに思い出す。
      母が用事をすませている間、店の外で待っていた時、どこからか小さな声した。
      小さな子猫の声。
      お店の影の箱の中にその子猫はいた。
      声は小さかったけれど、元気な子猫で、箱の外へ出ようとしていた。
      「あぶないからだめだよ」
      私は子猫が箱から出ないように手をかざした。
      子猫は遊んでもらってると思ったのか、私の手にじゃれてくる。
      回りを見ても母猫がいるような気配はない。
      箱の中にこの子が一匹だけだ。
      この子はこれからどうなるんだろう。
      夜になったら?お腹がすいたら?
      そんなことを考えたら、いてもたってもいられなくなった。
      「なにしてるの?」
      そんなときに母の声が降ってきた。
      その声にはもうすでに棘があった。
      ああ、だめだ。
      すぐにそう思った。
      だめだ・・・それは、子猫に会ったときからわかっていた。
      声を聴くまでもない。
      でも、言わすにはいられなかった。
      「この子、つれて帰ったらだめかな・・・」
      その時の私の精いっぱいの勇気を出してそう言った。
      「だめにきまってるでしょ?お父さん、病気なんだから」
      取りつく島もない母の声だった。
      考える余地も、迷いもない、きっぱりとした口調だった。
      「行くわよ」
      母はそういうと私に背を向けた。
      その背中に、私はこれ以上言うことが出来なかった。
      でも、そこから動けなかった。
      「ほら!」
      母の鋭い声に反射的に立ち上がった。
      その時だった。
      一人の女の人が私のところに駆け寄ってきたのだ。
      「大丈夫だから。この子は私が連れて帰るから。心配しないで」
      そう言って、子猫を箱ごと抱えると、もう一度「大丈夫だからね」と言った。
      そして、駅のロータリーに止めてあった車に乗りこんだ。
      私はしばらくその車を見ていたけれど、「いい加減にしなさい」と母に腕を掴まれて、その場を離れた。
      「あの女の人、泣いてたっけ」
      子猫の入った箱を抱えて、もう一度「大丈夫だからね」と言った声が、涙声だった。
      私ははっとしてその人の顔を見た。
      女の人は目に涙をためていた。
      びっくりした。
      私のせいだと思って、どきっともした。
      でも、あの時、私は助けられたのだ。
      子猫を置き去りにして帰らずにすんだ。
      そして、たとえあの時、私が無理やり連れて帰っても、子猫はしあわせにはなれなかった。
      私は子どもで、家の中では何の力もなかった。
      だから、私は絶対家を出ようと思った。
      母の綺麗好きも父のアレルギーもどうにもならないだろう。
      なら、私が家を出るしかない。
      そして、動物と暮らせる家に住んで、今度もしあの時のような子猫に会ったら、今度こそ助けてあげよう。
      あの時、助けてくれた女の人みたいに。
      「あの子、大きくなっただろうなー」
      思い出すたび会いたくなるけど、会う手立てもなければ、会わせる顔もない。
      私は助けてあげられなかった。
      「それにまだ一緒に暮らせないしな」
      私はまたベッドに倒れ込んだ。

      珍しく仕事が早く終わって、私はいつもの駅を通り過ぎて地元のある駅で降りた。
      昨日、子猫のことを思い出したせいかもしれない。
      「ここに来たからって、会えるわけないんだけどね」
      改札を出て、駅の入り口でロータリーを見回す。
      「あ、七夕か。今日」
      子猫がいた店先に大きな笹飾りがあった。
      私は思わず、店先に向かって歩き出した。
      笹飾りの脇、店と店の隙間。
      箱が合った場所を見る。
      私はあの時のように、そこにしゃがみこんだ。
      あの子はきっと元気に暮らしてる。
      「大丈夫。心配しないでって言ってたんだし」
      何もない場所をしばらく見ていたら、「あの・・・」と後ろから声がした。
      私は慌てて立ち上がった。
      こんなところにしゃがみこんでいたら、具合が悪いのかと思われたのかもしれない。
      「あ、大丈夫です。すみません。具合が悪いとかそんなんじゃないですから」
      私は振り向いて頭を下げた。
      「あの、間違えてたらごめんなさいね」
      「はい?」
      「昔、ここで子猫を見つけたことない?」
      「え?」
      私はびっくりして顔をあげた。
      そこには30代半ばぐらいの女の人が立っていた。
      あの時の人だろうか・・・顔はよく思い出せない。
      「黒と白の子猫。ここで、私が連れて帰ったんだけど・・・違う?」
      「あ、覚えてます。多分、私だと思います」
      私はびっくりして、胸がドキドキしてきた。
      「本当に?すごい、こんな風にまた会えるなんて。そこのお弁当屋さんにね、お弁当買いに来たの。そしたら、あの日のあの子とよく似た後ろ姿のあなたが見えて。背も、服だって全然違うのに、なんでだろう。似てるなーって思って、そしたら、思わず声かけちゃった」
      女の人は、そう言うと鞄の中からスマホを出した。
      「あの子ね、大きくなったのよ。元気だし」
      そう言うと、画像を見せてくれた。
      「本当。大きくなってる」
      「ね?大きくなったでしょう?ほら、他にも・・・」
      そう言って、次々と画像を見せてくれた。
      窓際で丸いクッションで丸まって寝ているところ、餌を食べているところ、こたつの中・・・その画僧のどれもにたくさんの猫が写っていた。
      「猫、たくさんいるんですね」
      「そうなの。ちょっとすごいよね」
      「みんな、しあわせそう。あの子も、よかった・・・」
      そう言った瞬間、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。
      ほっとした。
      よかった。本当に、よかった。しあわせそうでよかった。
      「ねえ、時間ある?今からうちにこない?」
      お姉さんはハンカチを差し出すとそう言った。
      「え?」
      「この子に会いに来ない?」
      「いいんですか?」
      「うん。あ、ただ、みんな人見知りだから、2階から降りてくるかはわからないんだけどね」
      「え?」
      びっくりしている私をよそにお姉さんは、「こっち、こっち」とロータリーに止まってる車に向かって歩き出した。

                                                           終








      ワンピース

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        2号とワンピースを作る約束をしている。
        ワンピースと言っても、Tシャツに布でスカートを作ってくっつけるだけなのだけど。
        でも、布を買ってくるまではしたものの、そこからストップしている。
        もう、夏休みだ。
        今作らなきゃ、着られない。

        中学生になると着る服ががらりと変わる。
        好みも変わるし、背伸びもしたくなる。
        だから、今年買う服は慎重になる。
        来年も着られるような少しお姉さんぽい服を選んだりして。

        さて、ワンピース。
        これは、まあ、家用だし、そんなに深く考えてないのだけど、2号から「スカートの丈は長くして」と言われている。
        マキシ丈のワンピースが人気らしく、憧れるらしい。

        マキシ丈ワンピースと言えば、1号が先日がっくりしていた。
        かかとの高いサンダルをはいていたのに、かわいいマキシ丈ワンピースが、まだ長くて引きずってしまうとのこと。
        背の高くない女の子も着られるのを作ってくれてもいいのに・・・と言っていた。
        もう少し身長伸びるといいけどなぁ・・・


        さて、さて。
        約束と言えば、もう一つ、文庫カバーを作る約束をしてるんだった。
        裁断までしてあとはミシンをかけるだけなのだけど、その、ミシンが・・・

        ワンピースと文庫カバー同時に仕上げよう。
        ミシン出したときに・・・いやいや、今度の週末には仕上げよう。
        でないと、ワンピース、本当に出番がなくなっちゃう(笑)



        甘い香り

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          ドアを開けたら、甘い香りがした。
          それもちょっと、むせかえるような甘い香り。
          今月からボトルウォーターの宅配の人が変わった。
          この人の香りだろうか。
          そんなことを思っていると、その人は台車からボトルウォーターを3本おろして、「今月からよろしくお願いします」と、香りにぴったりの甘い笑顔を浮かべた。
          私は曖昧な笑顔を浮かべながら領収書にサインをして渡すと、引き換えに来月の配達予定日が書いてある紙をもらって、ドアを閉めた。
          玄関にはほのかに甘い香りが残った。
          「そうだ。洗濯物を干すんだった」
          私は、洗面所に行くと、洗濯物が入ったかごを持った。
          窓を開けてベランダに出ると、甘い香りがした。
          これは金木犀の香りだ。
          隣の家の金木犀が満開なのだ。
          「さっきの香りも金木犀だったのかな」
          それがわかるのは、また来月だ。
          来月、宅配に来るころには、金木犀も散っている。
          「あんまり甘い香りの人は好きじゃないんだけどなぁ・・・」
          そう呟きながら、久しぶりに思い出した甘くて苦い恋は、その日一日中、胸の中から消えなかった。

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